「ぽっかりと、更地。血迷って、更新」
ドアを開けると
今まであったはずの
見慣れた
一軒家も
アパートも
小さな祠も
ーーきれいさっぱりなくなっていた
あって当たり前だと思っていたものが
突然なくなるなんて
実際失うその瞬間まで
夢にも思ってなかったわけで
でも
失ってしまうと
そういうこともあるんだな
って妙に変に当たり前に
常識面して受け入れてしまうもので
といっても
実際は業者の人が来て
重機が入って
ガンガンゴンゴンやり始めたのは
もうずいぶん前からのことなわけで
気づいてはいたけれど
自分ではどうしようもないと言い訳をして
見ないふりしてたんだけど
やっぱりぽっかり更地になってしまうと
こっちまで心にぽっかりと穴が開いた気がして
叫びたくなるのは
なんともいいがたい
嫌で痛くて切ない気持ち
この大きくて冷たい重機は
何年も何十年もそこにあった
そこにあるのが当然だった建物を壊したけれど
僕の心にぽっかりと穴をあけたものは
いったいなんなんだろうと
隣の小学校に咲く
子供たちの卒業と入学を見守った
桜の花びらが散りゆくのを眺めながら
雨に当たりながら
寝起きのままの恰好で
ふと考えてしまうのですよ
この雨粒は
僕の涙だったらいいなあと
こんなに泣けたらどんなに気持ちいいだろうかと
重機の動く振動に
腹の底を震わせながら
ふと思ってしまうのですよ
壊されかけた階段は
僕に100の絶望と
100の希望を与えたわけだけど
さあどうしようかと悩む僕は
今日も
踊り場で
ーー開き直ることに夢中です
アゴが伸びて
地面に突き刺さって
そのまま伸びて
伸びて
伸び続けたら
世界を見渡せるのになあ
と思う今日この頃です
以上
料理成分なしでお送りすますた。